こんな質問がありました。

勉強になることがたくさん書かれていて、ありがたく読ませていただいています。

面を打つ時左手を落とすと書かれていますが、真下に下げる動きで良いのでしょうか。

少し詳しく説明して頂けますか。面打ちで試行錯誤しています。

 

ということです。
大変お返事が遅くなってしまいまして申し訳ありません。

 

結論から申し上げます。

私の感覚では、左手は「真下」が良いようです。

もう少し詳しく書いていきます。

 

真下に「下げる」と書くと、力を伴って意識的に下へ移動させるような感覚が私にはあるので、

力を入れて手を下へ持っていくのではなく、「重力に逆らわず落ちるに任せる」そんな感覚です。

 

 

ここからは余談、蛇足になりますが、

解説している言葉には、自分の体の感覚に対するだましが入っていることがあります。

できるだけ「力」が入るような表現を避けたいのです。

構えたときの左手の位置から、重力に逆らわず左拳を「落とす」。

真下へ落ちていくイメージです。

 

なぜこんな面倒くさい表現するのかというと、

この場面ではできるだけ力を抜いた動きをしたいからです。

初心者の子供たち、「足捌きは「すり足」で」、といえばきちんと「引きずり足」をやってくれます。

面打ちなどで打ちが弱いといわれることがあります。

強く面を打つにはどうしたら良いでしょうか?

力を入れて打てば強い打ちになるでしょうか?

力を入れれば強い打ちになるでしょうが、それでいいのでしょうか?

おそらく力を入れた強い打ち方は、「冴えがない」。

 

冴えがある打ちは痛くない。

などともいわれています。

しかし、冴えがある打ちを見せて頂くと、左手が甘い。

当たる瞬間、左手が浮くのです。

 

もう一つ。

「冴え」ある打ちにするために、目標が面布団になっている。

痛くない打ちにするためには面布団に当たったときには、竹刀の下向きの動きは止まっていなければいけない。

そのために、せっかく剣先を加速して速く振っても、すぐに急ブレーキをかけなくてはいけません。

 

強い打ちが求められるのに、強く打つと冴えがない。

矛盾を感じませんか?

 

「冴え」に対して、私は独自の定義をつけました。

これが正しいかどうかはあえて問いません。

私にとっての「冴え」の定義です。

 

「冴え」のある打ちとは、

力を入れていないのに強い打ち。

このように定義しました。

 

ここには、痛いとか痛くないは関係ありません。

むしろ、強い打ちは痛いのは当たり前じゃないですか。

しかし、力は入れません。

 

簡単なことですよ。

面布団を叩くという意識から、額から切り込み顎まで斬る意識に変えるだけです。

これだけで、力を入れなくてもかなりガツンと強い打ちになります。

 

もう一つ良いことがあります。

間合いです。

面布団を叩くには、面の輪よりも先革が5~10cm面布団の上に行っていないとできません。

額から切り込むイメージでは、面の輪に先革が乗れば良いので、

後5cm詰めないと面布団には届かない、と思っていた間合いからでも十分届きます。

しかも顎まで斬るので強い打ちです。

剣道では1拍子で打て、といわれます。

 

私の妻はピアノをやるので、剣道の1拍子は音楽では2拍子だと以前から指摘されていました。

確かに多くの先生は、速く「上げ、下げる」素振りを1拍子だとみなしています。

どんなにがんばっても、速い2拍子には違いありません。

 

剣道では竹刀を二本の手で持っています。

両手を使って「上げる、下げる」という逆方向の動きをすれば、どんなに速く振ろうと、

二拍子の動きにしかなりません。

 

左手落として右の親指を突く方法の面打ちでは、それぞれの手は分担が決まっていて、

一つの方向しか動きません(実際には左手は真下に落とした後、右手にって前に出て鳩尾前に収まります)。

 

左(落とす)・右(突く)のタイミングを限りなく近づけていけば、

ほぼ1拍子(実際には1.1拍子~1.2拍子?)になります。

 

ほぼ1拍子なのに、速い・振りがある・打ちが強いと3拍子そろっています(笑)。

 

「刺し面」といわれる、両手を前に直線的に刺すようにして打つ、速い面の打ち方があります。

確かに、1拍子に近い打ちですが打ちが軽い。

高校生や大学生、一般のかたはほとんど使っています。

脚力に自信がある場合、遠めの間合いから直線的に打ちます。

 

脚力の落ちてきたかた、

剣道にブランクのあったかた、

成人してから剣道を始められたかた、

女性のかたは、

若い男子の刺し面、速い面を苦手とするかたが多いと思います。

私の打ち方を上手く使うと、気持ちよく対処できます。

 

ヒントは、

1,面一本の距離を、相手が7自分が3くらいの気持ちで打つこと。

2,自分から相手が打ちたくなるきっかけを作ってあげる気持ち。

3,スピードに対してスピードではなく、相手に打つきっかけを作ってやって、後は自分がやることをやるだけと割り切ること。

 

1,について、

相手が自分の2倍のスピードがあっても倍以上の距離を動いてくれればなんとかなるさ。

きっと対処できます。

 

2,これが先を取るということです。

先先の先です。相手が出端面を打ちたくなるきっかけをこちらから作ってあげます。

 

3,打った打たれたではなく、剣道の理論を体で表現できるかの練習です。打たれにいく気持ちが大切です。

試行錯誤して、間合い、タイミング、打ち方等を模索して、得意技にしていく。

 

「打たれたくない気持ち」が強いと、理想の剣道からは遠ざかってしまうような気がします。