剣道 新型コロナウイルス感染症が収束するまでの暫定的な試合審判法 思うところ もう少し続きます

前回からの続きです。

以前、中体連ルールで中学生の三所隠しが反則になりました。
「左こぶしを上げ、面とコテと右胴を同時に隠す動作は反則」というものです。

中体連主催の試合限定のルールです。
普段中体連ルールで審判をしていない方は、全く反則を取れません。
ひょっとしたら知りません。
中学生の試合でも中体連ルールを適用しない試合では、「三所隠し」のみで即反則はありません。

左胴(逆胴)を躊躇なく一本にとれる方が少なくて、がら空きの左胴に逆胴を決めたにもかかわらず、旗が上がらず引き分けにされてしまったり、当たったかどうかよくわからないような技で敗戦になってしまうケースをよく見かけました。

胴に関しては、一本にとらない、一本にとれない先生方が多いように感じます。
「打てない技はとれない」とも言われます。
胴の打てる先生が少ないのです。

私は胴には思い入れがありまして、試合審判をしているとき、胴は一本に上げます。
もちろん、面やコテと同じ基準で一本としているだけです。

見逃す。
これ結構みんなやるんです。
試合開始早々の技。
すれ違いざまの引き技。
有名選手・優勝候補と対戦する無名選手の思いがけない技。
場外・竹刀落とし以外の反則行為。

10年ほど前でしょうか、全日本女子学生剣道優勝大会(団体戦)の審判をやったことがありますが、そのときのことです。
たしか、鹿屋体育大と東京農大の試合でした。

先鋒戦でした。私は副審。
鹿屋体育大の先鋒がやたらと、三所隠しをやるのです。
お互い触刃の間から打ち間へと入ろうとするとき、相手が攻めて間合いを詰めようとするとき、相手が打とうとするとき、鍔迫り合いで相手が何か仕掛けようとするとき。
とにかく、すぐに三所隠し。

見るに見かねて主審がやめをかけ、
「三所隠しが多すぎるから時間空費の反則をとります。」
副審二人とも
「はい。」

序盤に、鹿屋体育大の先鋒に反則をとりました。
おそらく、大学の試合では「三所隠し」の反則はとられないだろうと高をくくっていたのでしょう。
その後の試合の展開で、普段の癖で三所隠しをしようとして、途中でいけないと思ったのか、頭上に手を上げる前に止めてしまいました。
東京農大の子がそこに面を決めました。

次鋒以降も普段当たり前に「三所隠し」を多用しているのでしょう。
避けようとして途中でやめ、打たれてしまう。
鹿屋体育大は優勝候補の一つでしたが、東京農大に敗れてしまいました。

この団体試合の中で、三所隠しに対して反則をとったのは何回だと思いますか?
・・・・。

先鋒でとった一回だけです。
一回反則をとっただけで、団体全員がガタガタになってしまったのです。

コロナ以前、高校や大学の試合はとてもつまらないものになっていました。
立ち会いでの勝負を避け、避けながら鍔迫り合い。
鍔迫り合いから引き技をだまし打ち。
ほとんどの試合が「打ち合い」ではなく「避け合い」「だまし合い」でした。
両方が避けながら鍔迫り合いになる。
また、鍔迫り合いでも逆に交差させたり、相手の肩に竹刀をかけて打てなくしたり。

時間だけかかって、内容のない剣道でした。
そして、だまし討ちのうまい選手が勝っていく。
インターハイを会場で見たことがありますが、個人戦は特に、上位の試合になるほど眠たくなります。
本当にウトウトしてしまいます。

間合いが詰まってさあこれから・・・、というところでお互いバンザイ。
団体戦は試合時間が決まっているので少し我慢すれば良いですが、個人戦はダメです。
延々避け合いが続きます。

さて、コロナ渦で剣道の試合を成立させるために、全日本剣道連盟は暫定ルールを定めました。
感染のリスクを減らすため、鍔迫り合いの時間をなくすことが一番の狙いでした。
が、それと同時に今までの勝負のあり方を是正しようともしています。
全日本剣道連盟のホームページから引用します。

以下引用

【趣旨】

  1. 主催大会実施にあたっての感染拡大予防ガイドラインの遵守(感染予防)。
  2. 不当な「つば(鍔)競り合い」および意図的な「時間空費」や「防御姿勢による接近する行為」の解決。
  • これまでの試合は試合時間の約半分以上が、「つば(鍔)競り合い」に費やされていると言われている。これを改めて、立ち会いの間合からの攻め合いを中心とした試合展開へ移行する。
  • 剣道の試合にとって「勝負」の要素は大事であるが、姑息な勝負の仕方を是正し、反則ギリギリの勝負ではなく真っ向から勝負をする態度を養う。
  • 「つば(鍔)競り合い」については試合者の態度や心の問題が大きく影響し、規則だけで裁くのは困難である。試合者と審判員が共通に理解し、一体となって、良い試合の場を醸成する。

引用終わり

姑息な勝負、反則ギリギリの勝負ではなく、真っ向勝負を目指したのです。
今回の全日本女子剣道選手権、岐阜県予選決勝においては、真っ向勝負ではなく、「姑息」であり、「反則ギリギリ」ではなく「反則そのもの」の技で勝負がつきました。
私にはそう見えました。

恐らく、序盤から防御姿勢による接近を見逃してしまったために、途中から反則にはとれなくなってしまったものと思われます。(見ていないのでわかりません)

理事長が、
「竹村のは手が肩より上がっていないから防御姿勢ではない。」
と言われたことからもわかるように、
実際には肩より手が上がっていたにもかかわらず、上がっていないと思い込んでしまって、反則をとることが出来なかったのではないでしょうか。

いずれにしても、全日本剣道連盟の趣旨は、
「これまでの姑息な剣道から、真っ向勝負の剣道へと変えていきたい」
ということなのです。

岐阜県だけがせこい剣道を続けることのないよう、全日本剣道連盟の趣旨を理解し、選手・審判員がともに理解し、厳しく取り組んでいく必要を感じました。

いよいよ今週末、中体連の全国大会予選が始まります。
まずは市大会、翌週には地区大会と試合が続きます。
子供たちの努力が報われるよう、適正公平に審判を務めます。

選手の皆さんは公明正大に試合に取り組んで下さい。

心から応援します。

講習会で聞いてきた 新型コロナウイルス感染症が収束するまでの暫定的な試合審判法 令和4年 全日本女子剣道選手権 岐阜県予選決勝

前回、不可解な全日本女子剣道選手権、岐阜県予選、決勝戦について私の見解を書きました。
そして、岐阜地区剣道伝達講習会で聞いてきます、と終わりました。
6月25日土曜日、岐阜地区剣道伝達講習会に参加して実際聞いてきました。

審判講習の時間に手を上げて聞きました。

まずは確認から、


「左こぶしを上げ防御姿勢で、さらに逆交差になるよう自分の竹刀を相手の竹刀に絡め接近したらどうなりますか?」

理事長
「それは反則。」


「接近したあと、相手は正しい鍔迫り合いになろうと、腰の位置に左こぶしを下ろしているのに、接近した方は竹刀を裏のままにしています。それに対し相手は間を切ろうと一歩下がり、二歩めを下がろうとするところに、合わせて引き面を打ったらどうなりますか?」

理事長
「それも反則。」

竹村選手の行為は防御姿勢での接近も、相手が二歩め下がるのに合わせた引き面を打ったことも反則である、という確認が取れました。

ただし、私が聞いた時には、竹村さんの名前は出していませんでした。

「実は先ほどの事例は、6月5日日曜日に行われた、全日本女子剣道選手権岐阜県予選の決勝のことなのですが。」
と切り出すと、

理事長
「竹村のはあれは面有りだ。竹村の防御姿勢は防御じゃない。左手が肩より下だから防御姿勢にはならない。」

とのこと。
そこで私は、確認の意味で、
「その規定は条文のどこに書いてありますか?
 また、左肩よりも上がっていれば反則ですか?」
と聞いておきました。


規定がどこにあるかの回答はもらえませんでしたが、
「手が肩より上がっていれば反則だ。」
という回答でした。

その場で動画を見せて確認を取る方法もありましたが、時間が押していることもあったので、そこで終わりました。

別の講師は、
「あれは一本に見えたがなあ。」
といってみえました。

さて、もう一度動画を確認します。

岐阜県剣道連盟 令和4年 全日本女子剣道選手権 岐阜県予選 決勝

明らかに竹村選手が防御姿勢で接近するとき、肩より上にこぶしが上がっています。
頭のてっぺんに届くくらい上がっています。

結論、
竹村選手は、接近したところですでに反則。(理事長の説明をそのまま適用)

そして、一呼吸の間に引き面を打ったといわれましたが、相手が一歩下がり二歩めのタイミングに合わせ、狙いすましたように引き面を打っています。

ここでも反則。(理事長の説明をそのまま適用)
審判にこれが一呼吸以内に見えたのであれば、明らかに「一呼吸の捉え方」の判断ミス。

接近時の反則が見逃され、反則であるはずの引き面が一本となり、全日本女子剣道選手権の岐阜県代表が決定しました。実に不可解な結果です。
樋口選手が首をひねるのも無理はありません。

当初試合時間では勝負がつかず、延長を3回も繰り返し、水入り後のことだと聞いています。
この動画はわずか8秒ですが2回の反則行為が認められます。
試合時間全体を通して厳密に見直したら、大変な数の反則を竹村選手は犯しているのではないしょうか。

また、
竹村選手だから反則を取らなかった、あるいは取れなかったのではないかと、穿った見方も出てきます。また、竹村選手の打った反則引き面を審判が一本にしてしまったのも、竹村選手だからなのではないでしょうか。
若い頃に警察官と試合をして、こんなあほらしい審判をされるなら剣道をやめてしまおうか、というような裁定を何度も経験した身としては、そんな考えもよぎります。

私の場合は、剣道はやめず、試合をやめる選択をしました。

剣道の試合では審判は絶対です。
審判をしていて、様々な場面を瞬間で判断することが難しいのは私もわかります。
間違いはあるものです。ですから自分の判断に対して厳格に自らを正す必要があります。

今は誰でも動画を撮ることが出来る時代になりました。
観客は証拠を持っているのです。
判定が覆ることはありませんが、謙虚に間違いは間違いと認め、審判自身が反省しなければこれからの剣道は衰退していくことでしょう。

私たちも審判をすることがありますので、この点では身を引き締めなければなりません。

この証拠動画は岐阜県剣道連盟が公式ツイッターに上げたものです。
最初についたコメントにも、
「誰も合議をかけなかったのかな?」
とありますが、なかったのでしょうね。

優秀指導者育成講習会に参加しました

平成29年6月3日、岐阜メモリアルセンター剣道場にて、剣道範士 島野泰山先生による、指導者育成講習会が開催されました。

 

その中で、覚えておきたいことばがありましたので、ここに備忘しておきます。

「と、て、が、無し」

これだけを聞くとなんのことだかわかりませんが、攻めと打ちに関する考察になります。

 

島野先生の若き頃、九段範士(名前は失念)の先生から聞いた言葉だそうです。

 

と、

攻め と 打ち

攻めと打ちがばらばら。

これでは二拍子になり避けられてしまう。

 

て、

攻め て 打つ

これは1、5拍子。

これも避けられる。

 

が、

攻め が 打ち

攻めと打ちが一体となり、攻めが効き一本になりやすい。

 

無し

攻めもなく「ここ」というところで無心に出る技。

 

意識してできるのが、がの境地かな。

 

無しの境地は、「不動智」の世界。

 

講習会の最後の地稽古が非常に刺激になりました。

出てよかった。

平成28年5月29日(日) 全剣連派遣剣道講習会に参加して

平成28年5月29日(日) 全剣連派遣剣道講習会に参加しました。

 

全日本剣道連盟からの派遣講師は、福本 滋彦先生(東京)と祝 要司先生(愛知)の両教士八段でした。

 

昨年、世界剣道選手権が日本で開催されましたが、つばぜり合いのひどさが色んなSNSやブログ・フェイスブックなどで指摘されていました。

全日本剣道選手権でもそれに輪をかけたような試合が、優勝した試合巧者を中心に繰り広げられました。このH.P.に準決勝での押し出しについて、西村先生から書き込みがありましたが、いったい日本の剣道の将来はどうなってしまうのかと、誰もが不安になっていました。

その辺のことを何とかしなくてはいけないという想いが全日本剣道連盟にあったのかどうかはわかりかねます。きっと、審判法を今年はたださねばならぬという気持ちを持った先生方が多かったのだと思いたいですが。

 

今回の審判講習で印象に残っていることを書きます。

 

1,不当なつばぜり合いとは、

①,正しいつばぜり合いでない(つばのあわせ方、高さ等)

②,つばぜり合いを解消しようとしていない

③,打突する気がない

以上が不当なつばぜり合いである。

 

2,場外への不当な押し出しについて

打突の後の体当たりであるときは、不当な押し出しではない。

1回の打突に対し1回の体当たりは出た方の場外反則となる。

2度、3度の体当たりは出した方の反則。

もちろん、打突がなく、ただ押し出せば出した方の不当な押し出し。

耐えられたはずだ。などは言葉として触れられていない。

 

3,つばぜりあいでの、竹刀の逆交差肩掛けについて

相手に技を出させないために、竹刀を相手の肩に故意にかける行為は、積極的に反則をとる。

 

これらの説明がきっちりなされました。非常に明快になったと思います。これが多くの審判に行き渡りますように。心から願います。

 

だけど、今年もどうでしょうか?なんせ、中学校の指導的立場の先生がいらっしゃっていない。毎度のことですが、困りました。自主的にみえた中学の先生はわずかに見受けられましたが、役職上うえの方がいらっしゃっていませんでした。

 

高校の先生は上の方が結構みえているのに・・・。