剣道 最近の自分の稽古10 小手の打ち方1

小手の打ち方 1

前回まで面打ちの解説をしてきました。
今回は小手の打ち方について書いていきます。

 

 

面もそうなのですが、
「打つ」という動作を考えたときに、どんなイメージがありますか?

 

まず面打ちのおさらいです。

 

「上から打て」
これは指導者にいわれた経験のあるかた、多いと思います。
確かに面を打つには上から「打ち下ろす」のが当然であると思われがちです。

 

この指導をされるかたのいいたいことは、
「上から打つ」
ということがいいたいのではありません。

 

中学生や高校生にありがちな、いわゆる「刺し面」はだめだよということ。
あるいは、振りが斜めになっている右手が強いと、どうしても竹刀を右へ引っ張り、右からの打ちになりがちです。

 

それを矯正するための
「上から打て」
なのです。(そうであってほしい)

 

以前、岐阜で講習をされた元全日本選手権優勝者がありました。
中学生を対象に行われた、トップアスリートによる指導の一環だったそうです。

 

そこで、
「面は、面布団を打つ。」
と、かなり深い位置での面布団への打突を指導されたそうです。
かみ砕いていうと、
「物打ちで脳天を打つ。」

 

私の娘は身長140センチ台、小柄です。
講師(185cmほど)の面布団を物打ちでどうやって打つのでしょう?

 

そもそも、面を打つ正しい手の内で、腕を伸ばして40cmの身長差のある面布団に物打ちが当たるのか?

 

少しでも理論的に剣道を考えたことのあるひとなら、不可能なことはわかりそうなことです。
しかし、いつも試合に勝つことばかり考えていると、おかしな方向に剣道が向かってしまう、というよい(悪い)例ですね。

 

娘は、
「私が先生の面を打つのに、先生のいった位置を先生のいったとおりに打つにはどうしたらいいですか?、と質問しようと思ったけど、多分先生無理だからやめた。」
といっていました。

 

「剣道は、剣の理法の修練による人間形成の道」です。
正しい剣道を学ぶと人に対する思いやりが育ちます。

 

逆に、試合にばかりこだわったかたよった剣道をしていると、自分本位で利己的になり正しい剣道を忘れてしまいます。
もちろん、人に対する思いやりの気持ちを持つなんて無理な話でしょう。
いつも人をたたいて勝つことしか考えていないのですから、それも仕方ありません。

 

 

最近では、高校生や大学生・一般の、全国トップレベルの試合がインターネットを通して容易に見ることができます。

 

私もyoutubeを利用して拝見しますが、大会で上位にいく人たちに共通していることがあります。

 

第1に、手元がすぐ上がる(特に左手)こと。
第2は、つばぜり合いから分かれるふりをして、だまして打つのがうまいということです。

 

手元がすぐ上がるのは、打たれたくないから。
本来の剣の理法である、攻め合って我慢して打つことを放棄して、打たれそうならさっさと手を上げて避けにいくのです。
以前は全日本選手権くらいまでの、若い人の試合でしか見ることはありませんでした。
しかし最近では、それを流行らせたひとが八段になり、あろうことか八段戦でも見ることができます。

 

ほんとに、残念です。
この人が勝ってしまうからまたたちが悪い。
連覇してしまったし。
こういう人は影響力が大きいので、もっと剣道について考えて、自分の剣道を見つめ直してほしいものです。
日本の剣道が悪くなってしまいます。

 

「剣道」ではなく「剣道の試合」という別の競技になってきたような気がします。

 

かつて大先生と呼ばれた方々は、どんなに剣道が強くても「試合に勝つ事だけ」に執着されたわけではないように感じます。
もちろん、刀法を絶えず意識されていたことでしょう。
ですから、

 

古い時代、高段者の試合・立会は、相手に打たせず打って勝つ事よりも、
「自分の目指す剣道を体現すること」、
「修行の成果をためすこと」
に重きを置いておられました。

 

よくいわれるように、
「勝って打つ」
を体現しておられたようです。

 

 

話が大きく逸れてしまいました。

話を戻しますと、
「上から打て」についてでした。

 

さて、誠裕館の大塚範士は生前よくいってみえました。
「面は脳天を叩くのではなくて、切っ先で額から切り込むのだ。今の剣道の試合巧者は、試合で一本になりやすいからと面布団を叩けなどといっている。そんなのは面じゃないよ。」

私は道場の子供達に、面を打つときは先革が面縁(面金の廻りの輪と面布団をつないでいる堅い革の部分)に乗るように打つのだと教えています。
大塚範士のいう「額から切り込むのだ。」という位置がここになります。

 

ここに「先革が乗る」ためには少なくとも剣先が一度は面金よりも上がらなくてはいけません。

単純に剣先を面金の高さよりも上げるということを考えたとき、「上から打つ」の教えもあるので、どうしても右手で竹刀を引っ張り上げてしまう事になります。
これが曲者です。

 

剣道の先生方はよく、
「一拍子で打つ。」
といわれます。
私の妻は音大を出てピアノを教えていますが、剣道の先生方がお手本で見せる「一拍子」は全部二拍子だといいます。

 

音楽の指揮者が二拍子を刻むとき、指揮棒は下へおろして上げる動きをします。
剣道でのお手本の一拍子は、竹刀を右手で引っ張り上げて下ろします。
どんなに速くやっても二拍子は二拍子です。

 

右腕で引っ張り上げて右腕で下ろすことは片方の手で逆の動きをします。
上げて下ろす。だから、二拍子になります。

 

片方の手で上げる下げるという二つの動きをするので、スピードをどれだけ速くしてもあまり速くは振れません。
ここで発想の転換をします。
面を打つためには、剣先が面金よりも上がります。
一つの方法は右手で引っ張って剣先を上げる方法。
もう一つは
右手を動かさないで左手を下げる方法があります。
右手を動かさないので左手を下ろせば剣先は上がります。
ここから右手を前に伸ばしていきますと、剣先は下りていきます。
そして面縁に上から乗ります。

 

このときの左手は、構えの位置から一度(数センチ)下ろしたあと、上から柄を押さえたまま、みぞおちまで上げながらのばしていきます。
意識して行わなくても、右手親指を相手ののどに向かって突き出すに従って、自然と前に伸びながら鳩尾の高さに収まります。
右手親指で相手ののどを突くように出すと、自然に小指・薬指・中指が締まる形になります。
上筋が伸び下筋が縮むので手首が利き、強い打ちになります。

 

それぞれの腕が、剣先の上昇(左手)と切り込み(右手)を分担して行うので、逆方向の二つの動きを急速に行う必要はありません。
速く打とうとすれば、左と右のタイミングを極力近づけることでスピードは増します。
逆の動きを片腕でするよりははるかに早いうちができます。
しかも刺し面ではなく、振り幅のある面打ちです。

面打ちのおさらいをすると、以上のようになります。

 

 

さて、本題に入ります。
小手の打ち方です。
小手の場合は面とは違い、竹刀が打つ目標は構えたときの剣先よりも下にあります。
しかし、構えた時の剣先が表(お互いの剣先の左側)で交差しているので、相手の剣先が邪魔になりそのまま下ろしても小手には当たりません。

 

小手を打つためには相手の剣先を、下からくぐるか、上から越える必要があります。

 

まず、相手の剣先を上から越える方法です。

面打ちの時、左手を下に降ろすことで剣先を上げました。
同じように左手を降ろして相手の剣先より上に自分の剣先を持って行きます。
そして、相手の剣先を越えて、右手を落として小手を打ちます。

気持ちは、自分で自分をだますつもりで、
「面を打つ」
と強く念じます。

左を落とし、右も落とす。
小手は両手とも落として打ちます。

小手を打ったあとは竹刀が交錯しないよう、左に剣先を上げ残心を取ります。
小手が外れたら、その場で踏み込みすぐに面を打てるように、後打ちの面をくせにしておくとよいでしょう。

足捌きは、
右のつま先で
「面を打つぞ」
と、そろりと攻め、
足先行しますが手の内は構えたまま、
左手、右手の順で落とすときに、相手の右足を踏むつもりで右足を踏み込みます。

小手打ちの時、姿勢で特に気をつけることは、小手を見るために前屈みにならないこと。
腰から出る事を意識して、上半身をそのままの姿勢で保持します。

 

次は下から相手の竹刀をくぐらせる小手です。

長くなりましたので、次回にまわします。

 

 

剣道 最近の自分の稽古9 当たっても外れても(避けられても)打ち切ること

剣道 最近の自分の稽古9 当たっても外れても(避けられても)打ち切ること

こんな方にお勧めです。

大人になってから剣道を始められたかた。
中年の剣道愛好家のかた。
女性の剣道愛好家のかた。
五十肩の剣道愛好家のかた。
膝が痛い剣道愛好家のかた。
体力に自信がないけど剣道をやりたい、やっているかた。
永く剣道をやりたいかた。

 

当たっても外れても(避けられても)打ち切ること

調子の良いとき、打った後は自然に、踏み込み後の二次跳躍をして抜けています。

もう少し詳しく書いてみます。

 

前回の書き込みを引用しますが、

 

右つま先の攻めで、滑らせるように前に進み、もうこれ以上我慢できない、
というところで

左拳を落としたら、一瞬の差で右手の親指中指でつくった指パッチンの前段階から、
指パッチンをしていきます。
その時の手の使い方は、親指の先端で相手の突きを狙って前に出します。
竹刀が面に当たったら右親指を緩め、返しをつくると冴えがあるように見えます。
左拳は、始動で落とした位置から鳩尾の前に、右手を突き出していくのと
同じタイミングで、上から押さえた形で持っていきます。
以上が面打ちです。

と書きました。
が、足の方を書いていませんでした。

ここからが足になります。

手の動きに関しては解説しました。
足はというと、剣道の熟練度というか、
子供の頃から剣道をやったか、
大人になってから始めたかの差が出ます。

足の方は、実はつま先から出していき前に攻め、
右足を落として(踏み込み)いきます。

この踏み込みなのですが、
多くの方が右膝の先端のポイントを、床に垂直に落としたとき、
踵の付くポイントが、膝先より体側に戻ってしまう方が多く見られます。

左足の位置で面打ちの竹刀到達ポイントは決まるので、
どこまで届くかという観点では、右膝、右踵がどこにあろうと関係ありません。

膝の真下に踵を付く方はかなり多いと思います。
私は右足を着地させる位置は、バランスを崩さない範囲で、
できるだけ相手に近いところが良いのではないかと考えています。

なぜかというと、打った後の体の寄りが、一歩で大きくできるからです。

右足を着いた後の足については、
私が淺川春男範士に教わった方法がよいと思います。

右足を着いたら着いた右足の腿を使って体を上方に持ち上げつつ、
左足を素早く引きつけながら前方に跳躍し、左足から着地し構えの足位置に、
右足も着地させ、送り足で抜けて間合いがキレたと思われるところで振り返ります。

言葉で書くとこのようになりますが、
別のかたの言葉も載せておきます。

いちに会というホームページを主催しておられる、Hideさんの解説を引用させていただきます。

以下引用

 単発の前方への「踏み込み足」は、基本の足型から、
—————————————————————-
1.左足を蹴り出し(一次跳躍)、右足を重心と一緒に前に送りだす
2.右膝を軽く屈曲させた状態で、指の付け根の足底部分から着地
3.右踵の着地に併せて床を踏み締め、右膝上の大腿直筋を使い、左
足を引っ張り込みつつ踏み込んだ反動で軽く跳躍(二次跳躍)
4.左足を「基本の足型」の予定位置に、指の付け根の足底部分から
着地
5.右足を左足に対して「基本の足型」の位置に、指の付け根の足底
部分から着地
—————————————————————-
ここで大切なのは、「踏み込み足」は一段ロケットではないということです。「右足で左足を引っ張り込む」という動作があるため二段ロケットになっています。上記した通り、左足で蹴り出す動作を「一次跳躍」、右足で左足を引っ張り込む動作を「二次跳躍」と名付けました。 したがって「踏み込み足」を指導する際は、ここまでをひとつの動作として教える必要があります。これを怠るとあとあと「蹴り放し」や「左足の遅れ」が深刻な技術的欠点として残ってしまいます。

引用終わり

という解説をしておられます。

 

稽古をしていてよく思うのは、
せっかく面に当たったのに、途中当たらないと思うのか、中途半端に止まってしまう場面がよくあります。
面が逸れたとき、自分でブレーキをかけてしまい、体当たりに成らない場面もよく見かけます。

打突部位に、当たっても当たらなくても、踏み込んだ後の二次跳躍で左足を素早く引き込み、
その勢いで、体当たりをするか、抜けて振り返る。

これを意識してやっています。

それではじめて、

当たっても外れても(避けられても)打ち切ること

ができるのです。